体も心も傷つけぬ新しい治療法の紹介をかねて
西大阪病院 外科 西村 和明
滋賀医科大学 第二外科 助教授 藤村 昌樹

胆嚢を中心とした内臓の位置
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胆石とは 胆のうは通常、鶏卵二個分の大きさで、肝臓の右下に張り付いている「なすび」のような型をした袋で、食べた脂肪分の消化を助ける胆汁という消化液を貯えています。この胆のうにできる、まるで石のようなもの(結石)を胆石といいます。以前の日本には珍しい病気でしたが、最近はとても増えてきました。 わが国では以前、野菜や穀物が中心の食事でしたが次第に西洋化し、脂肪や砂糖の多い食事をとるようになったからです。胆石は虫歯と同様に文明病と言われる所以です。すなわち、肝臓で作られる胆汁のなかに、食物中の脂肪や砂糖の成分が結晶を作り、まるで真珠が貝の中で大きくなるように、泥状から砂状、結石となって胆石が作られていくのです。 胆石による症状 胆石により引き起こされる症状は様々ですが、心窩部(みぞおち)の痛みや右李肋部(わきばら)の痛みが代表的です。しかし、右側の肩こりや背中の張りがあっても胆石によるものと気付いておられない方が意外に多いようです。 胆石が袋から出ようとする時は、激しいお腹の痛み、しゃく(癪:疝痛)に襲われます。発作が起こった時は、胃の病気や心臓の病気と区別 が付かないこともあり、七転八倒の苦しみで救急車で病院へ駆け込んでこられる方も多く見られます。胆石を持っている方の約20%程度に、腹痛をはじめ、軽いものから重いものまで、さまざまな症状が出てくると言われています。 手術について これまでは胆石による痛みのある人、胆のうに炎症を起こした人、膵臓に炎症を起こした人などに手術を勧めていました。では、胆石があっても痛みのない人は手術をしなくてもいいのでしょうか?いいえ、そうではありません。その理由は、まったく新しい、体にも心にもやさしい手術法が導入されたからです。私は“胆石のある方は元気なうちに手術を受ける”ことを強くお勧めしています。胆石といえども、こじらすと大手術となり、長い入院が必要になったり、また生命すら危険にさらされることがあります。それらは、 (1)黄疸(肝臓や腎臓に重い障害を引き起こす)(2)急性化膿性胆のう炎(胆のうが化膿して腹膜炎を起こしてしまう。重症)(3)胆石膵炎(膵臓が強い炎症を起こすと死亡率が高い)(4)胆のう癌(早期の発見が難しく、大きな手術を行っても約90%の人は死亡する)等々の原因となり得るからです。 |
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いろいろな胆石 (胆石の数や性状は人により異なっていす。) (それぞれ1人の患者さんから取り出したものです。) (1),(2) コレステロール系のとがった胆石 (3) 1つの石を半分に割った胆石 (4) 径2.5cmの丸く堅い胆石 (5) 1643個もあった小さな胆石 |
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10年以上前の胆石手術は、お腹を大きく切って行いました。従って術後の痛みも強く、また約2週間の入院が必要でした。何よりも手術の後も腸の癒着による痛みや腸閉塞により度々手術を繰り返さねばならない手術に伴う合併症も多く起こっていました。従って“胆石は症状がなければ手術せずに様子を見ましょう”と言われる医師(内科医)が殆どでした。 しかし、約10年前に導入された腹腔鏡という新しい機器を用いることにより、胆石に対する手術の考え方は一変しました。これは、お腹に細いカメラ(腹腔鏡)を入れることにより、テレビに患者さんのお腹の中を写 しだし、お腹を大きく切ることなく、直径3〜10mmの細いハサミなどの道具を使って胆石の手術をしてしまうという、まったく新しい手術法なのです。 |
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新しい手術法のシェーマ |
| この方法で胆石の手術を行った場合は、まず第一に癒着が殆ど起こらず、痛みも少なく傷跡も目立ちません。そして手術の翌日か翌々日には退院して、元の生活に戻ることが出来るのです(アメリカでは日帰り手術となっています)。 |
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大きく太いミミズがはっているかのようです。
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ほとんど手術の傷はわかりません。
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例えば10年前から胆石を持っている人が、今日まで大丈夫だったからと言って、明日も大丈夫とは誰も保証できません。不発弾を持っていると考えて下されば理解していただきやすいかと思います。ことに海外旅行をされる場合は、出発前に手術を受けられることをお勧めします。環境や食事が変わると胆石が暴れ出す可能性が強くなり、海外で発症し、重態となり当地で手術を受け、命からがら帰国された方もおられます。いろいろ思い悩むより、元気で体力があり、症状がないときに新しい手術を受けておけば数日で済み、胆石があるというストレスからも解放されるのです。 新しい手術法である腹腔鏡下手術の良い点ばかりを述べましたが、この方法ではこれまでのお腹を切る手術とは全く異なる技術(うで)と機器を必要とします。従って、手術を行う病院や外科医がこの方法に十分に慣れ、かつ手術中のあらゆる事態に対応できないと、これまでの手術と較べ危険なこともあり合併症の頻度も高くなってしまいます。かかりつけの医師にどの病院がよいのかしっかりとご相談下さい。 以上、胆石の新しい治療法について述べましたが、お元気で体力のある時に治療をしてしまうことが、もっとも安全で、合併症などの問題が起こることも少なく、賢明な選択といえます。悲しいことですが、医療事故の頻発する時代でもあり、“自分の命は自分で守らねばならない”からです。 |
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(開腹しての手術後)
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(新しい腹腔鏡の手術後)
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病院のベットで点滴しながら入院しています。
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ハワイのビーチで日光浴も十分可能です。
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胆石の手術をして一週間後の生活
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─これまでの方法(開腹)と新しい治療法の比較─
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これまでの手術法 (お腹を切ってする手術) |
新しい手術法 (テレビを見ながらする手術法) |
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お腹の傷の長さ(合計) |
10〜15cm |
2.5〜3cm |
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手術時間 |
普通の体格の人:60〜80分 肥満の人:100〜160分 |
普通の体格の人:50〜70分 肥満の人:60〜80分 |
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術後の痛み |
大きい |
ごく軽度 |
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食事の開始 |
手術から2〜3日後 |
手術の翌日 |
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入院期間 |
手術から10〜14日後 |
手術から1〜3日後 |
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日常生活への復帰 |
約1ヶ月後 |
手術から2〜5日後 |
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手術の傷跡 |
目立つ |
殆ど分からない |
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術後の(腸癒着) |
起こりうる,防止法はない |
殆ど発生しない |
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費用 |
(術後10日間入院) |
(術後3日間入院) |
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備考 |
殆どの外科医が安全に手術することが出来る |
新しい技術に慣れた外科医でないと,手術中にも術後にも合併症が発生する危険性有り |